廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

先端文化学研究6

『眼と精神』
モーリス・メルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty) (1960)の作品
モーリス・メルロ=ポンティ(1908-1961)
• 初期の代表作『知覚の現象学
サルトルと共に実存主義者として活動
サルトル共産党に接近するとともに、訣別
• 一九六一年、51歳で急死。

思想概要
• 初期思想:「知覚」(≃感覚)から出発して、知覚こそが物そのものを捉えうると考える(概念中心主義の否定)
• 中期:いわゆる「構造主義」の発想を取り入れ、「差異」と「反復」の思想を展開
• 晩年:『見えるものと見えないもの』という大著を準備。哲学の根本的転換をはかる

メルロ=ポンティの魅力
• 心理学、言語学社会学、人類学との対話。
• いままさに、新しいもの、新しい意味が生まれつつある瞬間を捉える=
1. 芸術家の創作の瞬間
2. 初めての言葉
3. 私たちを取り巻く自然との相互作用
4. 社会的制度に動きを与えること。
・ いわゆる現代思想フーコードゥルーズデリダ)などに影響。彼らの意図がわかりやすくなる。

『眼と精神』を読むメリット
・ 晩年のメルロ=ポンティ思想を集約したエッセー
・ 絵画に「そって」思考を練り上げる。
・ 社会空間においてもうひとつの「場」を感じることができるようになる。

ラスコーの絵画
メルロ=ポンティは、「ラスコーの壁画以来、画家は可視性(visibility)の謎を探究した、と考える。
• 「可視性」=それ自体は隠れているが、ものを「見せるようにする」もの。。。
• 科学のように進歩するものではないが、つねに過去を取り上げ直しながら、螺旋状に進んで行く。
レンブラント<夜警たち>
• 絵画は「奥行=深さ」の謎を探究した。
• 遠近法はそのひとつの解決に過ぎない。

ファン=アイク<アルノルフィニ夫妻の肖像>
• 画家は風景に「呑み込まれ」ることから、制作を始める。
• → 「制作プロセス」の新たなモデル(オートポイエーシス論)。イメージに導かれた認識=行為。

岸田劉生切通の写生>
• <見えるもの>と<見えないもの>の狭間にあるもの。
• 見えないものは、見えるものの後ろに隠れているのではなく、見えるものに含まれている(が、見えない)。「エッジ」
• → 肯定と否定の絡み合い。存在と無の二者択一の乗り越え

ジャコメッティ
• 近さと遠さの両義性
• 近づきにおいて遠ざかり、遠ざかりにおいて、私たちの身体の奥底に侵入してくるようなものを捉えること。

ロダン
• 運動とは、ふつうある「物体」が座標系において動くこととされる。
• キャンバスや物に「貼り付いている」ような運動。運動とは、色彩と同じように物の一部をなす。
マチス 「蛇行線」(ラヴェッソン、ベルクソン)。
• 空間を作り出すような線。