廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

ジルベール・シモンドン「内容紹介」:『技術的諸対象の存在様態について』

ジルベール・シモンドン「内容紹介」:『技術的諸対象の存在様態について』

(未刊のテクスト)

 

『技術的諸対象の存在様態について』と題された書物は、技術的対象の十全な認識を文化に導入することを目指すものであり。この対象は諸要素(éléments)、諸個体(individu)、総体〔集合〕(ensemble)という三つの水準でとらえられている。現代文明においては、技術的対象によって人間に引き起こされる態度と、この対象の真の本性とのあいだには隙間がある。この十全ならざる混乱した関係から、買い手、作り手、操作者(opérateur)において、神話的な価値づけと価値のおとしめの総体が生じてしまっている。この十全ならざる関係を真の関係によって置き換えるためには、技術的諸対象の存在様態の意識化がおこなわれなければならない。

 この意識化は以下の三段階でおこなわれる。

 第一の段階においては、技術的対象の発生(genèse)をとらえることが模索される。技術的対象は人工的な存在として考察されるべきではなく、その進展(évolution)の意味は具体化(concrétisation)なのである。原初的な技術的な対象は、孤立した部分的な機能の抽象的なシステムであり、それらは存在の共通の土台も、因果論的な相互性も、内的共鳴ももたない。完成された技術的対象は、個体化された(individualisé)対象であり、そこでは構造のそれぞれが多機能的で多元決定されている。構造のそれぞれはそこでたんに道具(organe)としてのみならず、身体(corps)として、環境(milieu)として、他の構造の土台として存在する。この互換性(整合性)(compatibilité)のシステムにおいては、系統学(systématique)は、公理系(axiomatique)が飽和するように閉じられるが、そこで各要素は総体における機能だけではなく、総体的機能をはたす。具体的になった技術的対象にはいわば情報の冗長性(redondance)があるのだ。

 この情報理論は技術的対象の発生的進展を技術性(technicité)の保存の法則にしたがって解釈することを可能にする。その進展は、諸要素の連なり、諸個体、そして総体を通過していくのだ。技術的対象の真の進化は、連続性の図式ではなく、緩和(relaxation)の図式をとおしておこなわれる。進展の継起的なサイクルをとおして、技術性は情報として保存されるのである。