廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

小レポート課題:貫成人「『無気味なもの』としての身体」をめぐって

先端文化学研究VI : 10月28日

 

身体図式をめぐる議論

・「内部」と「外部」、「意図」と「目的」、「部分」と「全体」を媒介する動的なシステム。可変的であり、また場合によっては傷つきやすいものでもある。

・身体図式を意図的に変容させることが芸術・・

・身体図式がたとえば乗り越えがたい障碍に遭遇したとき、身体図式を組み替えなければならないとする。「統御できないもの」を取り込みうるような組み替えを、動きながら創発しなければならない。

・身体図式において、この「統御できないもの」が組み入れられたとき、新たなシステムが成立し、このシステムにおいてそれは「意味」をもつのだ。ただしそれは「言語」的な意味とは異なる意味である。

・身体には、触覚による把握、目による認知だけでなく、さまざまなものが重層化していることをさらに考えるとどうなるか。匂いの「図式」、味わいの「図式」が語れるだろうか。

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コメントより

・身体―状況系において「描くこと」とは何か。他者との関係。

・視点の分散と固定

・土方:身体的図式的な身体図式。非身体図式は追いかけると逃げていく。

・超越と「取り上げ直し」の永遠の循環。自己の易変性

・「タイトル」について。土方の身体のままならさ

・土方の難解さ

・状況ありきの身体ではなく、逆方向の働き。目の前の境界線を崩す。崩壊と生起・再帰の循環

・representとpresentは対極か。劇場性と演劇性(おそらく一緒?)

山海塾における動体無しの運動

・超越とは、融解した世界へ投げ込まれることか。→ プリント

・貫の「逆転」は、あるフローに則って始まるということか。入口が減点されるものではなく、もっと湿潤を許すものではないか。

・土方の非人間的身体。→ 子供といる動物、鎌鼬

・「画家はその身体を貸す」=「フォーサイスの動きによって空間が作られている」

森村泰昌

(参考資料)視点の複数性のダイナミズムとそれを意識するセルフ

中村英樹「視点集積の断層が生む非実体的なメタ視点」、『生体から飛翔するアート』、水声社、二〇〇六年。

 

1)いっぽうで、カオスに没入し、それに立ち向かう、さまざまな視点のせめぎあいときしみがある。

2)他方で、それに「まとまり」や「かたち」を感受する「メタ視点」も必要

ただしメタ視点は、神の視点でも、近代的な個人の視点でもない、「非実体的」なものである。

1)と2)の不可分な一体性を保つことで「個人」は統一的で能動的な自己を形成する。

→ これがカオスにおける「確かさ」をあたえてくれる。

  • Donald Judd のミニマル・アート

 

小レポート 11月6日(水)(月曜授業)

・これまでの授業のなかで、自分なりの問題をたて、それに対して自分で解答を模索する。

・抽象的でもよい(たとえば「現代において『無気味な身体』はどのような問題を提起しているか」など)し、論文や授業で示唆(かならずしも見たものでなくてもよい)した作品、さらには自分が見た・経験とした芸術について、とくに貫成人の論文の言葉を使いながら、まとめてもよい

 

例)

・現代(芸術)におけるpresence

現代アートにおける作者or観者の身体性について

・運動とそのリズム

・重力と身体の統一

・身体と状況の共-生ないしはせめぎあいについて

・身体図式の成立と「解体」or「再構成」

・超越と制作

・カオスからうまれる秩序

・画家の視点がうまれる場はどこにあるか

・状況への住みつきを生き直すこと(タレル)

・フラットな色面がわたしたちに突きつけるもの

・動体なしの運動をみること、踊ること

・非現前の現前とは

・運動をつねにあらたに誘導するシステム

・解体を自動化する身体としての舞踏

・「身体図式というものが機能するための基本構造を逆転したもの」という貫のテーゼについて。

・身体図式の組織化をも否定する舞踏の身体と、その観客

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ヒント

・引用するときは、(貫、p. 246)のようなかたちでよい。

・「論文を読む」とは、まずは論文全体の主旨をサーヴェイして、そのうえで細部に議論を見いだすものであるが、今回は後者のみでもよい。

・批判ももちろんよいが、たんなる「論破」ではなく、発展的な展開を問題提起するような「批評」を学んでほしい

・「宿題」の自分なりの作品鑑賞はぜひ活かしてほしいが、たんなる感想ではなく、論文の言葉とからめていくとよい

・箇条書きでいくつか列挙してもよい。できたら相互の連関を考えるとよい。

・他に自分なりの材料を出してもよいが、出典をきちっと調べておくこと。他の授業で習ったことを接ぎ木したものは評価されません。