廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

先端文化学研究VI 2015/10/7

先端文化学研究VI (廣瀬浩司) 水3

フーコーといえば、『監獄の誕生』(新潮社)のパノプティコンの分析が有名である。教科書的に言えば、近代において、監獄は処罰から監視の場となる。18世紀終わりにベンサムは、中心に監視棟を置き、個々人の振る舞いが丸見えになり、他方、囚人からは監視塔に誰かがいるのかわからない、こうして囚人はつねに監視の眼を意識し、自己を監視し、他者と監視しあう。これが一望監視装置である。
フーコーのこの分析は大きな影響を与え、とりわけドゥルーズフーコー論の影響で、こうした自己監視・相互監視の「コントロール(管理、制御)」が近現代の社会で強まったこと、そしてこのモデルは学校や病院において拡散したことがしばしば語られる。こうしてたとえば教育学では、管理教育・規律教育の批判が語られてきた。「管理社会のイデオロギー」の批判者としてフーコーは語られてきたのである。
本授業ではフーコーのこうした分析を無視するつもりはないが、1)フーコーの分析の微妙なニュアンスをとらえ、それがイデオロギー批判にはとどまらないこと。2)フーコーのもくろみは、自他の関係性のただなかにおいて、新たな自己を創出するたえざる試みであること。3)このような考えは、現代社会、とりわけ教育、病院改革、刑罰の意義などに関して、新しい光をもたらしうること、以上をテーマに、フーコーをたんに社会批判者としてではなく、ポジティヴな解決を模索する思想家として読み込んでいこうと考える。
これはユートピアであろうか。そうではない。異なった自己を創出すること、それはいま私達が生きている現実の場(=制度)における力の関係を見極め、そこに新たな突破口を切り開き、「外」に出ることであり、そのときいつのまにか自己は変わってしまっているのである。
そこでまず入門としてフーコーの1984年のエッセー「他の場所」を読んでもらい、ユートピア〔無—場所〕ならぬヘテロトピア〔異—場所〕へと旅立つことから始める。これを読んで各人がどのような場を切り開くのか、授業はそのことを確認した上で次の場に向かうことにする。
評価方法・基準:出席点(20%、中間レポートなどを含む)、学期末レポート、単位のためには3分の2以上の出席が必要ですが、それよりも問題に食いついて、自分なりの思考を切り開く意欲を評価します。レポートを学期末の「自由発表」に代えるkとおができるようにします。
参考文献
1. 廣瀬浩司『後期フーコー』(青土社)
2. 田中智史『教育思想のフーコー』(勁草書房)
3. 手塚博『ミシェル・フーコー』(東信堂)
4. 『フーコー・ガイドブック』(ちくま学芸文庫)

オフィスアワー:月4、月6(要予約確認)
メールアドレス:parergon[@]jcom.home.ne.jp
HP : http://www.asahi-net.or.jp/~dq3k-hrs/index.html廣瀬浩司 フランス思想と現象学
また私のレジュメの一部などは、http://d.hatena.ne.jp/parergon/
にのせていきます。ただし確実ではありません。原則として、前回のプリントのみ保存して次週にも配布しますが以後は廃棄します。