廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

2014-01-01から1年間の記事一覧

先端文化学研究会:廣瀬発表レジュメ(改訂版)

クロソウスキーと現代思想──フーコーを中心に 廣瀬浩司======== 問題点(松本先生からの示唆も含みます) 1)ドゥルーズがシミュラークル概念を明示的に放棄したのに対して、フーコーはヒステリー患者(『精神医学の権力』)、ソフィスト(『 2)…

松本潤一郎先生講演会

先端文化学研究会のお知らせ: 12月24日16時松本潤一郎先生(立教大学)「上向と翻訳――言葉の身体化」(クロソウスキーとマルクスの仕事の照らし合わせから)筑波大学人文社会学系棟 B618プログラム 16時—16時半:現代思想とクロソフスキー(仮題) 廣…

アスケーシスと「主体と権力」

「主体と権力」(1982) ・ 自分の仕事は、権力現象の分析ではなく、人間が主体化される様式の歴史。 ・ これまではそれを「客体」として分析してきた。 1)『言葉と物』:言語学、経済学、生物学という「知」による人間主体の客体化 2)『監獄の誕生』:狂…

動物的世界の夢幻的制度化と意味の萌芽

メルロ=ポンティ「自然の概念(つづき)──動物性、人間の身体、文化への移行」(1957-58) 『言語と自然』(みすず書房)所収。 メルロ=ポンティがめざす「存在論」:「存在そのもののうちに、或る不安定ないし或る運動を発見する」 「低次の行動」:有機体の…

音楽的理念の制度化

・ 「運動と知覚の動物」としての身体。・「私は喉で自分の声を聞く」「私たちは音響的存在である」 ・ プルーストの「小楽節」の分析(プリント) 音楽的な理念(idée/idea)は、感覚的世界とは別の第二の「肯定性(positivité)」ではない。感覚的なものが「…

制度化とは

授業でメルロ=ポンティの制度化について「わかりやすく」説明しようとしたが、舌足らずでしたので、説明しなおしておくと。。。メルロ=ポンティの場合、「制度化」というのは肯定的でも否定的でもあり、 1)肯定的には、既存の制度の硬直を、たんに破壊する…

戦うフーコー:第二部

コメントより ・フーコーの「快楽」とドゥルーズ/ガタリの「欲望」については慎改康之「欲望か快楽か」http://www.meijigakuin.ac.jp/~french/shinkai/pdf%20files/desir%20ou%20plaisir.pdf 「フーコーが社会野を権力の戦略によってその全体を貫かれたもの…

戦うフーコー:フーコーは何をしたかったのか

① 監獄は周縁へと追いやるが、周縁的ではない 解決: 従来型:法の乱用の除去、改革の連続(+心理学、医学、精神医学) ・犯罪を予防し、減らすようにする(治安) フーコー: ・ 総体を考え、現実を見る、何も自明だとしない。 ・ 公衆安全のための予防は…

『知への意志』p. 25-35を廻るメモ

『知への意志』p. 25-35を廻るメモ 1. この節の題名は「言説の扇動」(L’incitation aux discours)とあるが、inciterとは「扇動」というよりは、「慫慂すること」「うながしてさせること」であって、強制的、欺瞞的な意味はないことは注意すべきである。 (…

先端文化学研究(11/7):空間とその奥行

○「経験」「生きられた経験」 ○非ユークリッド幾何学的空間 ・空間そのものが湾曲 ・移動によって事物が変質 ・異質な部分や次元から成る ・相互に置換不可能 ・同と異が厳密に区別されない ・それ自身との同一性の関係を持たない。 ・転調:形、固有色、表…

先端文化学研究(10/29) : シモンドンとフーコーの権力論

・ ジルベール・シモンドンの技術論『技術的対象の存在様態について』。シモンドンはフランスの技術史家。ドゥルーズ哲学、ガタリの「機械」論、<マルティテュード>グループ、スティグレールのメディア論などに大きな影響を与えた。 ・ 技術は「有用な目的…

幻影肢(先端文化学演習10月27日)

『知覚の哲学』第二章:現代の空間概念と現代絵画、身体と精神 第三章:「もの」の世界とセザンヌ、ポンジュ 第四章:<ヨーロッパ、大人、男性>と<動物、子供、『未開人』、狂気>。デカルトモデル。動物の生、ロートレアモン 第五章:他者とは? デカル…

先端文化学研究

フーコーにおける規範概念。 1) norm : 規範、水準、平均。権力はnormalisationするもの。ある水準や平均からの逸脱を作り出すことによって、より細やかな「訓練=規律(discipline)」を可能にする。 ・ 「逸脱はなくさなければならない」しかし「逸脱が…

『知覚の哲学』第一章「知覚の世界と科学の哲学」

第一章 知覚的世界と科学の世界 問い: ・科学を否定することなく、科学(技術)が自足してしまうことを防ぐこと ・科学は近似的な認識であって、「出来事の不透明さ」(世界の厚み)は残り続けること。 ・現代の科学そのものが、こうした科学の自足を疑問視…

メルロ=ポンティ『知覚の哲学』イントロ

メルロ=ポンティ(1908-1961) フランスの哲学者。とりわけフッサールの現象学の導入、そしてその心理学、精神医学、社会学、教育学、人類学、芸術論への応用で知られる。主著は『知覚の現象学』(1945)。1961年に心臓麻痺で死亡したとき、超大作『見えるも…

先端文化学研究VI ヘテロトピア

フーコー権力論のポイント(『性の歴史I 知への意志』 1)「抑圧の仮説」の批判。権力とは、禁止などの否定的なものによる人間本性の疎外ではない。肯定的に何かを「生産」するものである。たとえば性について、さまざまな言説をうながすのが権力である。医…

『メルロ=ポンティ研究』18号目次

『メルロ=ポンティ研究』18号目次https://www.jstage.jst.go.jp/browse/merleaujp/-char/ja/詳しくはhttp://www.merleau.jp に掲載予定のニュース参照

先端文化学研究VI 2015/10/7

先端文化学研究VI (廣瀬浩司) 水3フーコーといえば、『監獄の誕生』(新潮社)のパノプティコンの分析が有名である。教科書的に言えば、近代において、監獄は処罰から監視の場となる。18世紀終わりにベンサムは、中心に監視棟を置き、個々人の振る舞い…

先端文化学コース紹介

比較文化学類「先端文化学コース紹介」 guidance.pptx

制度化概念と「次元の創設」(『メルロ=ポンティ研究』近刊、発表レジュメ

制度化概念と「次元の創設」本発表の目的は、メルロ=ポンティ思想における「制度化概念」の位置づけを押さえたうえで、講義ノートを含めて、この概念のアクチュアリティを提示することである。したがって講義の読解というよりは、他の発表と共鳴するような刺…

「実存、無意識、制度──メルロ=ポンティ正夢論の意義」

「実存、無意識、制度──メルロ=ポンティ正夢論の意義」http://rakuhoku.blog87.fc2.com/blog-entry-949.html 本稿は、近年刊行されたモーリス・メルロ=ポンティの「受動性についての講義」(1954)の原稿の研究に基づきながら、晩年のメルロ=ポンティは、フ…

「真理の政治に向けて──ミシェル・フーコーの生体権力論」『思想』2013.2

「真理の政治に向けて──ミシェル・フーコーの生体権力論」 本稿は、前掲書『後期フーコー』を踏まえつつ、とりわけ「真理を現出させる手続」の研究が、後期フーコーの政治哲学においてどのように重要であるかを整理することによって、現在広く議論されている…

『後期フーコー──権力から主体へ』自分まとめ

『後期フーコー──権力から主体へ』青土社、2011年3月、総頁341頁。 本書は、従来権力批判あるいは管理社会論の批判者として解釈されていたミシェル・フーコーの解釈を刷新し、晩年のフーコーの思想が「真理の体制の系譜学」という初期以来一貫した哲学的に貫…

『法の力』まとめだけ(改訂版)およびレポート

3つのアポリアの直中における「決断」 (絶対的)正義(計算不可能なもの)と法(掟)(計算可能なもの)との絡み合い。(絶対的歓待と条件付き歓待、「交換なき贈与」と「交換の円環」の関係に対応。 レヴィナス「他なる人との関係──すなわち正義」(『全…

「音楽、声、言語」(『第三の意味』みすず書房所収)補足とレポート課題

「音楽、声、言語」(『第三の意味』みすず書房所収)補足: ・ 「価値に関する無関心から、私たちの目を覚ましてくれるのが音楽です」。バルトはあえてひとつの「価値」を肯定して、「音楽とは何か」を問う →cf. ドゥルーズのニーチェ論については『ニーチ…

バルト「シューマンを愛する」(1979)(『第三の意味』みすず書房所収)

晩年のバルトの作品として、『明るい部屋』同様、みずからを実験台にするような作品である。彼がシューマンに見出す「純粋な無垢」=「対象なき純粋な苦悩」は、善悪二元論的な対立とも、精神分析的な葛藤とも無縁な、純粋な「自己」だけがあるような状態で…

『眼と精神』まとめ

モーリス・メルロ=ポンティ『眼と精神』(1961)(5) 1) まとめに向けて ・ 『眼と精神』の配った部分を通読し、心に残った表現、さらに深く考えてみたい問題などを見つけてくれるのが一番の願いです。とくに「見る」とはどういうことなのか、見ることを…

『眼と精神』2

四(p. 284-) ・近代絵画:錯覚説(イリュージョニズム)からの脱却の形而上学的意味。 ・絵画史:作品そのものがおのれを変貌させて続編になる。解釈しなおされながら、作品は作品自身になる。(285)奥行=深さ(profondeur/depth)は第一の次元である。 ・隠…

2013年度 メルロ=ポンティ『眼と精神』1(みすず書房)

一 身体の謎から絵画の狂気へ! 1) 身体論 ① 視覚と運動の縒糸(絡み合い) ・「見ること」と「運動」:「眼の運動の中に、<見る>という働きが起こっている」(257) ・ 「私はなし得る」(I can ↔ I think):「私はピアノを弾くことができる」=潜在能…

2013年度「セザンヌの懐疑」(3)

「セザンヌの懐疑」・ p. 21 : 「モチーフ」と「世界の一分(一瞬)(une minute de monde)」 モチーフ:セザンヌはまず、身体全体で風景全体を受け止めることから始める(世界に見られること)→ モチーフを摑む→ セザンヌはたんなる「自然に帰れ」ではなく、…