廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

制度化とは

授業でメルロ=ポンティの制度化について「わかりやすく」説明しようとしたが、舌足らずでしたので、説明しなおしておくと。。。

メルロ=ポンティの場合、「制度化」というのは肯定的でも否定的でもあり、
1)肯定的には、既存の制度の硬直を、たんに破壊するのではなく、それを開き、
主体が新たな行動(フーコーの「振る舞い」)のスタイル(様式)の次元を開くことを言います。
次元を開くだけで、「目標」は明確に表象されていないので、無意識的というか、「自発的」に「生起」するもので、あらかじめのプログラムではない。
2)否定的には、フランス革命スターリニズムをはじめとして、過去の革命が、
それが成就した瞬間に「堕落」してしまったという経験を受け、制度というものは
ひとたび成立してしまうと自動的になってしまう、という点もあります。

こういう両義的な「出来事」が「制度化」です。「開け」は、つねに
閉じられたり、既成のシステムにからみとられてしまう、ということが重要です。
絡み取られることで、事後的に「意味」や「記号」として生成する。これは
肯定的には、新たな行動の「支え」となります。

このように閉じないためには、あるいは開けを維持するためには何が必要なのか。
それにはシステムの中に何かポテンシャルが蓄積されていることが必要ですが、
それをどこに見い出せばいいのか。「肉」や「自然」の問題がそこから出てきますが、その哲学的な地位を定めるためには慎重でなくてはならない。「ポテンシャルがある」ということを独断的に前提することはできませんから。このポテンシャル自体、制度化されたものから遡行的に「構成」されるというパラドックスも組み込まなくてはなりません。