廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

2018-01-01から1年間の記事一覧

根源的闘争の原理の彼方に──マキャヴェリ

はじめに 『シーニュ2』に収められた「マキャヴェリについての覚書」はメルロ=ポンティ一九四九年の論文。メルロ=ポンティは一般に「共存」の哲学者として知られるが、この論文ではめずらしく「根源的闘争」の場としての政治の場から、いかに「集団的生活…

ラガーシュの「言語性精神運動幻覚」についてーーもう一人の私

Cf.「言語の病理」、『意識と言語の獲得』、pp. 76-83 ・概観。常態と病態はまったく同一でも、まったく異なったものでもない。 ・言語性幻覚(hallucination verbale) ダニエル・ラガーシュ『言語性幻覚と発話行為(パロール)』の記述 Dépersonnalisation…

言語の病理と「常態」

Cf. 「言語の病理」、『意識と言語の獲得』、pp. 76-83 ・概観。常態と病態はまったく同一でも、まったく異なったものでもない。 ・言語性幻覚(hallucination verbale) ダニエル・ラガーシュ『言語性幻覚と発話行為(パロール)』の記述 Dépersonnalisatio…

見えるものが自己に到来する

見えるものが自己に到来する(『眼と精神』) ・「人間」を超えた「自然」における出来事 ・ただし現象学は、知覚主体に定位するので、このような一種神の視線からの記述はしない。 ・ただし見えるものの「ぶれ」を身体的に感受し、そこに「さらに先に進む」…

言語の自己媒介と意味の生成

1)「言述(言説)(discours)が私の中で語っている」=言語の「自己媒介」的な働き。ただし「私」を通して作動する。 媒介とは ・みずからの働きをみずから隠しながら働く ・媒介されるもの(主体と客体、作者と読者)はその結果として生じる ・媒介が「生産…

ことばとその病理

『表現の科学と表現の経験』(『世界の散文』所収) --------------------------------------- これまでの分析と病理的な現象 189-193 話すこと: ・開かれた関係に入り込む、 ・傷つきうる者となること ・幻聴(言語的幻覚hallucination verbal)の例 → ノー…

言語理解における「こだま」と「ゆがみ」

コメントより ・二つの言語:「あえて言えば」「二つの言語があると言ってみよう」 ・「事後には」(après coup)。 メルロ=ポンティは別のところで「真理の遡行的運動」(ベルクソン)について語る。真理が真理であるためには、新しいものとしての意味が、い…

語りつつある言語と語られた言語

メルロ=ポンティのテクストの特徴について ・螺旋状に進みながら、同じ問題を拡張したり、深めたりする → メリット:たんなる論証ではなく、「体験」を同時に深めながら思考を深めることができる ========= 前回コメントメモ ・「記憶の再構成とは…

シモンドン翻訳 Simondon

解決の探究のための指導的概念──形態、情報、ポテンシャルおよび準安定状態 人間諸科学と心理学の一般理論が存在していないので、反省的思考は可能な公理化の条件を探究することを促されている。この作業は、必然的に発明的な要素がくわわることをともなうも…

メルロ=ポンティ「表現の科学と表現の経験」(1) 表現の科学と表現の経験(1) 問い: ・本を読んで何かを学ぶ、経験するということはどういうことか。 ・これは視覚世界と共通点がないか。本で風景を「見る」「記憶する」 ・本の記憶について。幼年時代…

先端文化学研究VI (廣瀬浩司)

先端文化学研究VI (廣瀬浩司) 授業の主旨: ことば(parole)とは何か。本授業では、 1)たんに記号として何かを指し示すもの。メッセージを伝達する道具。 2)論理的な思考体系(普遍文法)がどこかにあって、言語はそれを経験的世界において再現しよう…

先端文化学演習II: 『眼と精神』イントロダクション

テクスト メルロ=ポンティ(1908-1961)『眼と精神』第4節を精読する。今学期はとくに、用語などの次元でも深く読み込めるようにする。 メルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty) フランスの現象学者。心理学、精神病理学、言語学、人類学、政治哲学など…

オルガンとダンス。あるいは習慣論の脱構築

「オルガンとダンス」(『知覚の現象学』p. 243- メルロ=ポンティは「身体図式」の更新の思想家ではない。習慣について、オルガン奏者の例で考え直す。 ・オルガン奏者が、ひとの楽器で、短い練習で弾けてしまうこと。 ―反射説(機械論)の批判 ―分析説(観…

野生の存在に出会うために(未完)

野生の存在に出会うために(未完) 比較文化学類教員 廣瀬浩司1. 透視画法的認識の解体とは 「我々には、子どもの時間やその早さを、我々の時間や我々の空間などを未分化(indifférentiation)にしたものとして理解する権利があるのだろうか」 ──あるところ…

メルロ=ポンティ「表現と幼児のデッサン」第2回

メルロ=ポンティ「表現と幼児のデッサン」第2回参考文献:鬼丸吉弘『児童画のロゴスーー身体性と視覚』(剄草書房)、1981。体芸図書館蔵 1)表出期 ・身体性を主とするが、それだけではない。しるしをつけること、表出行為そのものに関心。 → 円形の発見 →…

メルロ=ポンティの奥行き概念

メモ 1)マルローの芸術論について かつての宗教芸術 → 「古典時代」(ルネッサンス以降)の世俗化(近代)=表象(représentation)の時代 → 現代における「主体の回帰」(宗教へのノスタルジー)という図式をメルロ=ポンティはどのように批判しようとする…

メルロ=ポンティのアール・ブリュット(先端V)

メルロ=ポンティ「表現と幼児のデッサン」(『世界の散文』の一章、メルロ=ポンティコレクション『幼児の対人関係』にも所収)、1950年代前半の草稿。第一段落:問い ・「プリミティヴ」、幼児、「狂人」のデッサン ・無意識の詩(ダダ・シュルレアリスム…

先端文化学研究V 幼児の対人関係2

空間の「理念化」(153)の過程 ・一歳:像を「見かけ」にする ・像を「遊び相手」にすること。 「アニミズムをもてあそんでいる」しかし「もてあそぶためにはかつてのアニミズムの痕跡がなくてはならない」「夢幻劇にとりこになる」 → 「像」に魅せられるこ…

先端文化学研究V 幼児の対人関係

幼児の対人関係(『眼と精神』所収、<メルロ=ポンティ・コレクション『幼児の対人関係』所収)・1949年度よりソルボンヌ大学児童心理学・教育学教授。1949-50年度の講義。 ・全体の問題 幼児における他人知覚の問題。 「一般に幼児が他の幼児や他人と接触す…

先端文化学研究V 幻影肢2

コメントより(抜粋) ・それ自体世界内に属していない直接の経験が世界に内属し、世界を変革しうる仕方で存在しうるために、習慣的身体が存在している。しかしそれは現勢的身体でもある必要がある。二重の身体性。 ・現前と不在の中間的存在を「見えるよう…

演習 差異の体系としてのラング(4/25)

第一段落 ソシュールの教え ・記号はひとつずつでは意味しない。 ・「そのそれぞれは、意味を表現するというよりは、それ自身と他の記号の間の意味の隔たりをしるしづける」 これをすべての記号に一般化すれば、「ラングは名辞=項なき差異からなる」 より正…

先端文化学研究V:幻影肢1

幻影肢(p. 145まで) ・生理学的説明:大脳に至る神経の経路上で、ある刺激が、別の刺激にとってかわる。→ 麻酔でもなくならないし、切断手術がなくても現れる。情動にも依存。 ・心理的説明(疾病失認)。欠損を拒否している。記憶、意志、思い込み。 → し…

先端文化学演習1 イントロ 4/17

先端文化学演習I メルロ=ポンティの著作をできるだけフランス語原文に近接しながら読む。・テクスト:Maurice Merleau-Ponty, « Le langage indirect et la voix du silence », Signes, Paris, Gallimard, 1960./ 英訳:”Indirect Language and the Voices o…

先端文化学研究Vイントロ4/16

モーリス・メルロ=ポンティ紹介メルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty, 1908-1961)は多くの顔を持ちながら、現代の思想に生き続けている。 主著『知覚の現象学』は今も読み継がれ、さまざまな領域(認知心理学、看護学、精神医学、教育学、社会学、人類学…

先端文化学研究Vイントロ4/16

モーリス・メルロ=ポンティ紹介メルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty, 1908-1961)は多くの顔を持ちながら、現代の思想に生き続けている。 主著『知覚の現象学』は今も読み継がれ、さまざまな領域(認知心理学、看護学、精神医学、教育学、社会学、人類学…

先端文化学演習I シラバス(最新版)コピー

フランス思想をフランス語(英語)でたのしむ先端文化研究とフランス思想研究。メルロ=ポンティを中心に、さらに読み進んでいきます。原則としてフランス語原文を参照しながら、ゆっくりとゆっくりと読むことにします。フランス思想そのものに関心のある人…

ヨーロッパで人文学を学ぶ

ヨーロッパで人文学を学ぶ ――フランス、ベルギーへの留学と国際的コミュニケーション 来聴歓迎 日時:3月21日(水)13:00-16:30 場所:人文社会棟 A721 13:00:「イントロダクション」 廣瀬 浩司(現代語・現代文化専攻) 13:05-14:00 :「フランスで研究す…

先端文化学演習II:「語る言葉と語られた言葉」

メルロ=ポンティの言語論・『知覚の現象学』(1945)の「表現としての身体と言語」の章。身体表現の創造性と言語の創造性を並行したものとしてとらえる(「語る言語(parole parlante)」と「語られた言語」(parole parlée)の区別。「セザンヌの疑い」にも…

西村ユミさんと解釈的現象学

西村ユミ 「患者を理解するということ──看護師の経験、その身体性に学ぶ」1 看護の現象学とは Cf. ベナー『解釈的現象学ーー健康と病気における身体性・ケアリング・倫理』(医歯薬出版株式会社) 解釈的現象学とは。 「解釈」→ ・「説明」と対立。 ・世界に…

セザンヌの懐疑以降

「なんか間主観性の話で行き詰まっているのだけれど」 「そうではない、学説史なら言えるのかもしれないが、とつじょ退屈したのだ」 「はあ」 「自己と他者というタームで考えるのに退屈したというのがひとつ」 「ほお」 「それからそもそも『対話』という形…