廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『法の力』まとめだけ(改訂版)およびレポート

3つのアポリアの直中における「決断」 (絶対的)正義(計算不可能なもの)と法(掟)(計算可能なもの)との絡み合い。(絶対的歓待と条件付き歓待、「交換なき贈与」と「交換の円環」の関係に対応。 レヴィナス「他なる人との関係──すなわち正義」(『全…

「音楽、声、言語」(『第三の意味』みすず書房所収)補足とレポート課題

「音楽、声、言語」(『第三の意味』みすず書房所収)補足: ・ 「価値に関する無関心から、私たちの目を覚ましてくれるのが音楽です」。バルトはあえてひとつの「価値」を肯定して、「音楽とは何か」を問う →cf. ドゥルーズのニーチェ論については『ニーチ…

バルト「シューマンを愛する」(1979)(『第三の意味』みすず書房所収)

晩年のバルトの作品として、『明るい部屋』同様、みずからを実験台にするような作品である。彼がシューマンに見出す「純粋な無垢」=「対象なき純粋な苦悩」は、善悪二元論的な対立とも、精神分析的な葛藤とも無縁な、純粋な「自己」だけがあるような状態で…

『眼と精神』まとめ

モーリス・メルロ=ポンティ『眼と精神』(1961)(5) 1) まとめに向けて ・ 『眼と精神』の配った部分を通読し、心に残った表現、さらに深く考えてみたい問題などを見つけてくれるのが一番の願いです。とくに「見る」とはどういうことなのか、見ることを…

『眼と精神』2

四(p. 284-) ・近代絵画:錯覚説(イリュージョニズム)からの脱却の形而上学的意味。 ・絵画史:作品そのものがおのれを変貌させて続編になる。解釈しなおされながら、作品は作品自身になる。(285)奥行=深さ(profondeur/depth)は第一の次元である。 ・隠…

2013年度 メルロ=ポンティ『眼と精神』1(みすず書房)

一 身体の謎から絵画の狂気へ! 1) 身体論 ① 視覚と運動の縒糸(絡み合い) ・「見ること」と「運動」:「眼の運動の中に、<見る>という働きが起こっている」(257) ・ 「私はなし得る」(I can ↔ I think):「私はピアノを弾くことができる」=潜在能…

2013年度「セザンヌの懐疑」(3)

「セザンヌの懐疑」・ p. 21 : 「モチーフ」と「世界の一分(一瞬)(une minute de monde)」 モチーフ:セザンヌはまず、身体全体で風景全体を受け止めることから始める(世界に見られること)→ モチーフを摑む→ セザンヌはたんなる「自然に帰れ」ではなく、…

2013年度前期「セザンヌの懐疑」(2)

補足:デフォルマシオン メルロ=ポンティは「見かけの大きさ」という観念を否定する。モノは、モノの側からある大きさで近くされることを要求する。遠くのものは遠近法的知覚より大きく見える。モノの大きさの恒常性。 近づいてくる汽車の映像は実際より大き…

2013年度 「セザンヌの懐疑」

セザンヌの懐疑」(1) ・ なぜ「懐疑」と訳す?デカルトの「方法的懐疑」:伝統的スコラ哲学に対して、新たな「不動の基礎」を求め、少しでも疑わしいもの(感覚。。)は偽とし、疑うという思考の働きそのものが疑えない「確実なもの」であることを示す。…

『法の力』(法政大学出版局)イントロのみ

『法の力』 デリダに対する関心は、八〇年代までは文学者によるものが多かった。ところが九〇年代になってデリダは、突如アメリカの法哲学者たちの前で、「正義」について語り始める。 背景:デリダはそれまで「差異の戯れ」「自己に対する遅れ」「決定不可…

エルテ 6/23

毛髪:「新たな身体を形成し、最初の身体の基本的な形に不調和とならずにはめ込まれる補足的な(supplémentaire)な肢体(p. 19, 最終行)。」女性の身体をdé-former。女性と髪型の相互変調(p. 20, 後ろから3行目)。→ 身体から発した線が、線の意味を増殖す…

「この古きもの、芸術」6/6

真実 この断章は、p. 11の「しかし」で二つに分かれ、前半では「女性」というモチーフが彼の中心主題であり、それは「いったん見定められると、空間全体を揺る動かす」ほどである。他方後半では、この「女性」が象徴ではなく、「マーク(標識)」「刻印」「…

バルト「この古きもの、芸術」五月二六日

第8断章 ポップは「存在論的な」芸術、事物の本質の芸術。 1) ウォーホールの「繰り返し」:事物がまなざしの前で震える=みずからを求める、みずからの本質を求めるための震え=「ポーズ」(cf. 『明るい部屋』)。個人の本質の肯定。 2) リキテンスタ…

バルト「芸術、この古きもの。。。」四月二八日ぶん

第二断章(pp. 142-143):「ポップ・アートの二つの顚倒」 ・価値の顚倒 ・ (「クロヴィス・コンプレックス」。クロヴィス(466-511)はフランク族の王。キリスト教徒である妻の影響で、戦いに勝利したのちに、ランスの司教聖レミの洗礼を受け、キリスト教…

滞留

・ ハイデガーは、「死に向かう存在」について語り、それは自己に「本来的」で、固有の不可能性であるという。つまり他者の生はけっして経験できない、というのがハイデガーの立場である。⇒ デリダの操作。(1)「死の瞬間」は分割可能ではないか。(2)そ…

パレルゴン

パレルゴン(『絵画における真理』所収) paregon : ergon(作品、働き、営み、仕事)の外にあるもの。芸術作品における「付属的な要素」。 カント:装飾、絵画の額縁、彫像の衣服、建築の柱廊は美の意識を高める。しかし「黄金の額縁」がそれだけで形式化す…

代補 五月七日

デリダによる「脱構築」: ・ 自然と人工、充実と欠如、不足と過剰、正常と異常の対立そのものを掘り崩していくためにどうするか?? ・ 「自然的なものは、構造的に非自然的なもの(外部、技術、他者)を孕んでいる」。自然と人工の区別は自明ではなく、「…

代補 四月三〇日ぶんを今さら

代補(プリント「代補」「グラマトロジーについて(下)」参照。 「代補」(supplément/supply)補うこと、埋め合わせること=とって代わること。 代補の例:音声言語を補う文字が、かえって記憶力を失わせ、音声言語にとってかわり、危険なものと見なされるこ…

「線(ラインズ)」をめぐるつぶやきまとめ

・ガタリの「斜め性」は、じつは斜めの明確な線ではなく(それは水平でも垂直でもあるから)、水平でも垂直でもない「くねくねした(sinueux)」線であるのかも。また切断でも接続でもないというのは、この線がたえず自らに帰りつつ、円環にもならずに支線を…

デリダの「贈与論」まとめだけ [改訂版]

デリダの贈与論(『時間を与える』(未訳)cf. 『他者の言語』(法政大学出版局) 先行説: ・モースの贈与論。贈与の持つ神秘的な力が社会的紐帯となっていること ・ レヴィ=ストロースの読解。贈与は「円環的な交換のシステム」をかたちづくる。cf. 『親…

「歓待」についてのつぶやき

つぶやき ・ 自己が生まれる場において、自己は他者の人質となる=自己と他者たちは「同時に生起する」を実感すること。生まれようとする自己に対して、他者たちは現前しない(レヴィナス「他者の痕跡」)。 ・ 事実として歓待はつねにすでに「条件付き」で…