廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

幻影肢(先端文化学演習10月27日)

『知覚の哲学』

第二章:現代の空間概念と現代絵画、身体と精神
第三章:「もの」の世界とセザンヌ、ポンジュ
第四章:<ヨーロッパ、大人、男性>と<動物、子供、『未開人』、狂気>。デカルトモデル。動物の生、ロートレアモン
第五章:他者とは? デカルト 幼児の情動 ヴォルテールブランショカフカのユーモア
第六章:絵画と空間(2)、映画、音楽、文学
11月6日:二章
11月10日:
11月17日:三章
12月1日:
12月8日:四章
12月15日:
12月22日:五章
1月5日:
1月20日
1月26日:
2月2日:
客観的身体と現象的身体
1) ファントム現象、幻影肢(phantom limb)。
2) 先行仮説から両義性へ
➢ 末梢説。残存した神経が感覚や痛みを伝える。身体の姿勢の記憶。砲弾の記憶(生理学)。
➢ 中枢説:脳内の感覚の残存(デカルト「手の痛みは、脳内にある」)。しかし脳内痕跡と実際の感覚は実証されない。
➢ 心理説:事故のショック、認めたくないという心理的な要因。心理的記憶(大人に現れやすい)。しかし、実際に神経を遮断すれば痛みはなくなる。
身体的・物理的にも説明しきれないが、心理的な要因だけでも説明できない現象。
3) 「世界内存在(世界に住み込む存在)に特有な両義性。
4) 「行動のスタイル」:脚を切断された動物は、そのとき新たな歩き方や泳ぎ方をみずから創出することによって、環境からの「課題」に応答する。(注釈:「スタイル」。環境への身の構え方。しかしそれは環境への単なる「適応」や「反射」ではなく、個々の動物がそれぞれ自分の身体に働きかけることによって生み出すもの。もがきながら作り出される盲目的な目的。みずから自分の歩き方の「規範」を作り出す。「身体のポテンシャル」
5) 「意味(sens)」〔=「感覚、方向」〕。環境のきめ、表情、起伏、色彩。身体のほうもそれに対してある種の「身体図式」を作り出すことで動き続ける。「環境の意味」と「身体図式」はおたがいに基礎付けあっている。有機体と対象の「絡み合い」。行為しながら知覚し、知覚しながら行為すること。
6) 「身体図式」は固定したものではない。偶然の事故によって「傷つけられうる(vulnerable)」ものである。ふたたび動き続けるためには、この偶然のものを身体図式に「取り込み直し」、新しい身体図式を作り出さなければならない(自己治癒的=世界の切り取り直し)。身体図式は不安定で、偶然にさらされているが、それだからこそ世界に開かれつつも、新たな身体図式を作り出すことができる。身体図式はダイナミック。新しい意味をつねに自己の身体に「沈殿させていく」
7) 幻影肢:身体図式がうつろいゆく過程において生じる出来事。二つの図式のあいだで足踏みし、世界との隔たりが露呈する。そのとき世界に「意味」を持たないもの。環境の偶然性と身体図式の相関関係における「ずれ」
8) 幻影肢の「準現前」。「目の前にいないひとりの友人の存在を生き生きと感じるように」感じられるもの。「不在」でも「現前」でもない「両義的な現前」。現在の身体のまわりに、雰囲気のようなものとして漂っているもうひとつの身体。「過去になってしまうことを決めかねているかつての現在」。
9) プリントへ。
参考文献:
1) 『知覚の現象学1』みすず書房、135.5-Me66
2) 河本英夫『損傷したシステムはいかに創発・再生するか: オートポイエーシスの第五領域』(新曜社)141.51-Ka95
3) 宮本省三『リハビリテーションルネッサンス』(春秋社)
4) 宮本省三『脳の中の身体』(講談社新書)中央 081-Ko19-1929
5) シルダー『身体の心理学』141.2-SC3
6) 廣瀬浩司「幻影の身体と道具の生成」
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