廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

制度化概念と「次元の創設」(『メルロ=ポンティ研究』近刊、発表レジュメ

制度化概念と「次元の創設」

本発表の目的は、メルロ=ポンティ思想における「制度化概念」の位置づけを押さえたうえで、講義ノートを含めて、この概念のアクチュアリティを提示することである。したがって講義の読解というよりは、他の発表と共鳴するような刺激的な論点のみを取り出すことを目指したい。(1)この概念は、(文化的なものを含めた)経験ないしにおける「次元の創設」という「出来事」と定義される。次元の創設とは(a)厚みを持った事物や世界への開けと創設。(b)他者との側面的共存の次元の創設。(c)こうした世界と他者に取り囲まれつつ行われる行為の生産性。(d)生成状態における制度が、過去と未来の蝶番をなし、「すでに創設されてしまったもの」の(無意識的な)不滅性とその反復(意味の強度的な系列化)を、自己変容の契機へと組み替えうることなどを示している。(2)この概念は、(受動性や自然の問題系と共鳴する)「動物的制度化」や生命的・感情的制度化から始まり、芸術、知(理念性や真理の創設)、そして歴史的制度化に至る階層的記述によって提示される。だが問題はその階層性より、それらを貫くようにして重層化していく働きとしてこの概念を捉え、「次元の創設」の具体的様相を提示し、メルロ=ポンティ哲学が内的な時間性を備えた共同体論へと開かれ、多様な領域と共鳴することを示したい。

http://www.merleau.jp/documents/2013_MPC19_program.pdf