廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

先端文化学概論:4月27日:ダンスの身体

ウィリアム・フォーサイスの身体
ウィリアム・フォーサイス(William Forsythe)(1949-)
アメリカ出身のコンテンポラリーダンスのダンサー、振り付け師
クラシック・バレエの動きを「もとに」それをひとつひとつ「意志」から解放し、分割し、解体していく
• → 身体そのものの「物質性」を探究。動きながら自分の動きを吸収する「場」を作り出していく。
アフォーダンス理論による解釈:
• (「身体表現」ではない
• 身体に眠っている隠れた「意味」を探究し、それをまた自分の身体の運動に取り込んでいく。
• そうしてはじめて身体は「外」へ開かれ、生き生きとしたものになる。(佐々木正人『レイアウトの法則──アートとアフォーダンス』)

○勅使河原三郎(オートポイエーシス論による解釈)
• 勅使河原三郎(1953- )劇団KARASの振り付け師、舞踊家
• Cf.河本英夫『哲学、脳を揺さぶる』(日経BP出版センター):「オートポイエーシス理論の日本における代表的論者」

勅使河原の言葉 (河本英夫『システムの思想』より
• 身体には「窪み」や「へっこみ」がある。それが「アンテナ」だと思う
• 型に「あえて」はまってみる。そこに「距離感」が生まれる
• 関節の中に会話や議論がある。それなしには「自在性」は生まれない
• 足の裏は局面なんです。ほんとうに静止したいときには身体を操り人形のように浮かすしかない
• 「重力より早く落ちたり、一緒に落ちたり、重力よりゆっくり落ちる感覚は同一線上にあって、それは3点ではなくて無限にある。そこに遊びが生まれる」
例『Absolute zero』
• 「身体を通じて空気を動かしながら、それ自体で空気になる」
• 回転や反復運動をしながら、新しい空間を創出していく。

• 『ガラスノ牙』:歩くことの緊迫感
• 全力で努力するというよりは、「ワンクッション置く」ことで、動作が複数化していく
• あるひとつの動作が分割されて、分岐する
• 「分岐点」の「躊躇」の豊かさ
例)『Bones in Pages』
• 「人間は吊されていなくても、すでに人形である」(勅使河原)
• 重力に浸された身体(河本英夫
• 重力、光、空気=身体にとっての根源的な環境。

まとめ:
• 1)空気の中の流動性、まばらさ、反発、よどみを身体で知覚する
• 2)環境の特質を身体知覚+環境との境界を運動によって切り取り直す
• 身体は「精神」の道具ではない。
• 身体がみずからの可能性を探究すること。これは自分に閉じることではなく、むしろ「新たな意味」を生み出し、外部へと、そして他者へと開かれていくことなのだ。

参考文献
佐々木正人『レイアウトの法則』
河本英夫『システムの思想』
河本英夫『哲学、脳をゆさぶる』