廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

先端文化概論 西欧的遠近法とその臨界


・ パースペクティヴ(線遠近法、一点透視図法)は、3次元の空間を1次元のキャンヴァスにつなぎとめる技法として、きわめて自明な表現方式だと考えられている。
・ しかしながら、この技法は1400年代のとりわけイタリア周辺において発明された「世界観」「身体と世界の関係の幾何学化(理念化)」の試みと考えられる(cf. パノフスキー『シンボル形式としての遠近法』(ちくま学芸文庫
・ 19世紀後半の画家(マネ、印象派セザンヌゴッホ)たちは、このパースペクティヴと格闘しようとした。その試みは、たんに絵画の技法の変化ではなく、私たちの身体と世界との関係の変容をも迫るものである。さらにはこの格闘がどのように現代美術に引き継がれていったのかも見ていくことにしよう。
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• Per-spective=「透かして見ること」(デューラー)。画面が一種の「窓」になる。
• アルベルティ(Alberti)が『絵画論』(1435)で一点透視図法として理論化。それが「正確」な遠近法とされる。「絵画は視覚のピラミッドの平らな切断面である」
• 近代のヨーロッパの一種の「発明品」である。
幾何学的な理論化によるもの
• その後のヨーロッパの認識の仕方と関係=「合理化」の過程
• 問題:このような見方は「普遍的か」。19世紀以降の絵画の変容はそれとどうかかわっているのか。。。
• 統一された空間像
• 観察者の位置(画面からの距離)があらかじめ定められている。
• 空間は空虚で、物体はその中に配置される。
• 消失点は無限を表す。無限に開かれた空間。
• 「主観的なものの客観化」(パノフスキー
• 「画像の有限性が空間の無限性と連続性を感得可能にしている」(パノフスキー
ベラスケス<侍女たち>
ミシェル・フーコー『言葉と物』
• このベラスケスの絵画にあるのは、「古典的表象の表象のようなもの」、「それが開く空間を規定すること」であろう。
• だが「王」という中心が揺らいでしまったらこの空間はどうなるのか。

• 古典的な遠近法の特徴
• 1)合理的な空間
• 2)無限で、連続的で、等質的な空間

遠近法の前提
• ひとつの動かない目で見ていること
• 「位置」の関係のみが重要で、空虚な形式にすぎない。生理学的な要素は捨象(色、質感、視野の周辺の歪みなど)。
→ 私たちがつねに動いている二つの目で見ており、視野が球面的であることも無視
要するに「身体性」がない