廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

レポートの書き方3−4年生バージョン

参考資料:レポートのコツ(3−4年生バージョン)

レポートの書き方については、いろいろな本が出ていますが、実は学問分野、対象領域(日本か、英米か、その他か)について大きな差異があり、各授業での資料を参考にしたり、教員の指示を待ったりしたほうがよいでしょう。ここではむしろ基本的な態度について書きます
1) 教員が求めるもの:これは何と言っても、教員が授業で言いたいこと、身につけて欲しいこと、問題として考えてほしいことを、どれだけ「受け止め」てくれるか、そしてそれを自分なりに展開してくれるかなのです。だからもちろん授業のポイントをうまくつかんで器用に期待に応えるのもいいでしょう。しかし、私としてはそれよりも、教員も悩むような解けない問いについて、問題の「難しさ」を受け止め、学生なりの回答を模索しているような態度が好ましいと考えています。
2) そのためには、インターネットなどで「ネタ」(どうせするなら図書館などのサイトで論文検索しましょう)を探す以前に、まずは授業ノート、教員のレジュメや資料をじっくりと見直してみる。教科書があれば熟読し、参考文献(紹介されたもの、教科書にあるもの、など)があれば図書館で手にとって眺めてみる。これが出発点ですし、また、将来の卒論の出発点にもなるかもしれません。
3) 引用の重要さ
 レポートをいざ書き始めるときには、上の資料(教員のレジュメ以外)の「引用」をするため、アンダーラインを引いたり、コンピュータで「引用集」などをまず準備したりしてみるといいでしょう。そしてそれを眺め直してみると、授業や関連資料で自分がどういう点にひっかかるのか、興味を持つのか、疑問を持つのかが見えてきます。そうしたら、それに仮の題名を付けてみましょう。(例:「ストリート・ダンスにおける身体感覚について」など)。
4) 仮題名がついたら、それを長く説明するような文章を仮に書いてみましょう。例)「ストリート・ダンスにおいては、古典バレーやコンテンポラリー・ダンスとは異なる身体感覚があるように思う。それは何か。そこに他者の目はどう関係しているのだろうか」)
5) そのあとで、引用で得た直観を生かしながら、簡単に項目を箇条書きにしてみましょう。
例)1. ストリート・ダンスの発生と現状
  2. 踊る身体の身体感覚。共に踊る身体の意味。
  3. 他者の目の意義
  4. これからの社会におけるストリート・ダンス
6)さてこれでいよいよ書き出すわけですが、その際に重要なのが3)の引用です。引用にはいくつかのパターンがあります。
A) まとめ的に文章に組み込む。例)この点についてフランスの批評家ロラン・バルトは「身体がばらばらになりながら新たに組み直される感覚」 について語っている。ストリート・ダンスを踊る者の身体感覚はまさにそれである。だが、それはどのような作用に基づくのだろうか。
B) 長い引用は以下のようにします。
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 ストリート・ダンスの身体感覚について、ロラン・バルトは「ダンスの身体」(1967)で次のように言う。

ダンスの身体は漂流する。漂流しながらふたたび集合する。それは身体がばらばらになりながら新たに組み直される感覚である。ダンスするとき、身体はいわばもう一度生まれ変わるのだ 。

ここでロラン・バルトは、ダンスが「漂流」と「集合」の二重の運動によって成立していることを強調している〔と、一度まとめ直す〕。つまり、身体はこの二重の運動の緊張関係に挟まれていることを意味する。しかし、これはダンス一般論であっても、ストリート・ダンスの特殊性については多くを教えてくれない〔と、この引用の不十分さを指摘したり、反論したり〕。ストリート・ダンスの特殊性を考えるにあたっては、どのような要素が必要なのだろうか〔と、さらに論を展開〕。
注意:卒論などでもありがちなのは、参考文献を読んで、その要約を延々と自分の言葉で作ってしまい、その典拠がはっきりしないものが多いことです。たとえば「ストリート・ダンスの発祥は、・・・で・・・頃である〔典拠は??〕。それは・・・・によって広まった〔典拠は?それも同じ典拠?〕」のように書かれているのですが、このひとつひとつに注などで典拠を付けなくてはなりません。レポートや論文の終わりに参考文献を付ければそれでいいと思っている人がいるので念のため。段落の初めに「以下の記述は山本花子『ストリートダンスの歴史』を参考にした」と書く場合もありますが、それだけならその本を読めばよいので、論文としては「山本花子『ストリートダンスの歴史』によれば、「・・・」だという。しかし最近の研究では・・・」などと、先行研究を「突き合わせる」のが理想です。
7) 結論:最後にかならずまとめ的な段落を作ります。これまでの論述を振り返りながら、自分なりの結論を出せればベストです。「・・・について興味を持ったのでこれからも調べていきたい」などの「決意表明」は御法度です。
8) 仮説の見直し:さて、ここで 3)4)に立ち戻り、「仮の題目」「その説明」をみなおしてみましょう。不十分に見えれば実はこのレポートは成功です。それだけ思考が前進したからです。題目を変え、7の「結論」を手がかりに、仮題目などを見直し、「この論文でとくに示したいのは、ストリート・ダンスの所作のひとつひとつに他者の身体が組み込まれていることである」というように「仮説」のように書き換えましょう。(できあがり)