廣瀬浩司:授業資料格納所

授業用レジュメの残り物

河本英夫「障害の傍らを通り過ぎる」、『現代思想』(青土社)、vol. 38-12, 2010年10月号。

河本英夫「障害の傍らを通り過ぎる」、『現代思想』(青土社)、vol. 38-12, 2010年10月号。・「障害を生きることの底なしの深さ」(174)。 距離のなさ(自己触発)(cf. 時間意識)。 距離のなさにおける気づき(awareness)。行為のさなかでみずからに出…

木村敏論のためのメモ2:時は流れず

氏の思想である意味もっとも現象学的であるのは「タイミングと自己」という論文である。そこで彼は、時間を三つの位相に分ける。ひとつは「父母未生の生」という時間以前の時間。これは形而上学的前提というよりは、現象学的な記述が深まるにつれて、「なか…

木村敏論のためのメモ

木村敏氏の著作をはじめて講義で正面から扱って印象に残ったのは、私の専門ではない精神医学プロパーの議論でも、その哲学的思索そのものでもなく、ひとりの患者を前にして行為する氏のアクチュアリティである。もちろん哲学的思索も刺激的だが、それをドゥ…

木村敏『からだ・こころ・生命』II-5「医学への主体の導入──二人称の関係の共有」

木村敏『からだ・こころ・生命』II-5「医学への主体の導入──二人称の関係の共有」・他者の死がアクチュアルで主体的な出来事として体験されること → その両義性。過去と未来の境界で起きる出来事・二人称的アクチュアリティ。自他の差異、自他の境界がそれ自…

メルロ=ポンティの「死」についての考え方

自分の生について反省するあらゆる人にとって、自分の生を<私的な意識状態の系列>とみなす原理上の可能性があるのはたしかだ。白人文明の成人はそう考える。しかしそのように考えられるのは、このような日常的で系列的な時間を跨ぐような諸経験を忘れてし…

時間を与える メモ

贈与の主題cf. 「時間を与える」(『他者の言語』法政大学出版局所収)(1) 円環=交換と贈与 マルセル・モース(1872-1950)の「贈与論」:ポトラッチ。贈与の持つ「力」。マナという物の持つ呪術的「力」 レヴィ=ストロースの構造主義:交換のシステムの一…

ドゥルーズにおけるヴァーチャリティと木村敏におけるヴァーチャリティ:リズム論へ向けて

前回の抜粋 1 「生きている」アクチュアリティ 「アクチュアリティ」:「非・不連続性」 ○ なぜ「連続性」と言わず「非・不連続性」と呼ぶか(57-58) → ドゥルーズはこのようなものを「非人称的」で「問題的」(問いを投げかける)で「特異性の生産」を孕ん…

引用のしかた

引用のしかたについて http://researchmap.jp/muvad5cb1-1849043/?action=multidatabase_action_main_filedownload&download_flag=1&upload_id=71068&metadata_id=73369

1 「生きている」アクチュアリティ 問い:現代の自然科学的な医学は、はたしてほんとうの意味で生にかかわっているのか。 ・目的意識と価値観の排除 ・ヴァイツゼッカー「生命そのものはけっして死なない。死ぬのは個々の生き物だけである」(56) ・「生きて…

法の力 序

II-1 時間と記憶、メシア性と神の名 補足: 開け、開在性、開放性(Offenheit) ハイデガー中期の概念。 初期は「現存在≃人間」が本質的に世界や自分の存在可能性について開かれてあること(脱自的) 中期は「存在の開放性」。「存在それ自身が、そのうちで…

あしたのからだ 田中亮介

わたしのからだはここにはいない 真っ白な部屋のちょっとしたはざまにおちこむと みぎてがひっぱられ ひだりてがねじれる わたしのからだはあちこちにいて ひとがなでさすってくる 私が吸う空気のなかにいる悪霊たちそんなからだをみているからだはここにい…

パレルゴン

1)パレルゴン ergon(作品)—外の装飾や主題に関係ない付属物一般。カントは額縁、彫刻の衣服、建築の壮麗な柱廊などをいう。 ・本来は付属物、作品に対して従属的なもの ・しかし金の額縁は「虚飾」と呼ばれ、「真正の美」を損なうとカントは言う。 ・し…

ヴァイツゼッカー『ゲシュタルトクライス』

ヴァイツゼッカー『ゲシュタルトクライス』1) 相即(Kohärenz) 視覚の場合。蝶の運動→視線の移動→頭や、胴体や歩行運動。この運動がひとつの対象を現出させている。 鉄道眼振、読む行為。視界の中であるものに相即を保ち、あるものは犠牲にする。見るとい…

間身体性(つづき)5/9

『からだ・こころ・生命』1−3:「私的間主観性」 コメントより ・そもそも心と体の関係はなぜ問題になるのか。 ・なぜひとは「他者の心」を前提とするか、一般にこころが隠されているとされているのはなぜか。 ・・自分の理解している範囲でしか相手を知覚…

デリダイントロ(つづき)

題名:デリダの思想のエッセンス。「差延の非決定性」から「非決定性の試練における決定」まで 「差延」 ◎ デリダの三重の疎外(疎外なき疎外)=フランスにもアルジェリアにもユダヤ教の伝統にも所属感を感じない。とりわけ市民権を奪ったフランス語のみが…

先端文化学研究5 イントロダクション

題名 : 生命論的展開、生態学的展開とは何か問い:二〇世紀の思想は「死の思想」として展開してきた。ヘーゲルをモデルとした主人と奴隷の弁証法、ハイデガーの「死へと臨む存在」、フロイトの「タナトス」や死の欲動の重視、それらと戦おうとしたレヴィナ…

科学文化論イントロ

題名:フーコーの真理論と統治論──真理と裁判形態主題:「真理と裁判形態(形式)」は、1974年のリオデジャネイロでの講演である。いわゆる『監獄の誕生』が1975年、生ー政治について語る『性の歴史』第一巻が刊行されることを考えれば、この講演は彼の「権…

先端文学演習1

1)問い:2004年に死亡したジャック・デリダの思想は、その文章の難解さも手伝って、急激に読まれなくなった。テロリズム、移民の問題、「来たるべき民主主義」など、きわめて現代的な問題を扱っているにもかかわらず、その思想はごく一部の研究者には…

大学院 科学文化論シラバス

教育目標・授業の到達目標フーコー『真理と裁判形態』をフランス語または英訳で読みながら、彼の権力論と真理論との関係を探る。テクストはプリントで配布する。ニーチェの真理論の受容、「自己の真理を語る、こと」の意味などが主題であるが、中心となる『…

3月24日研究会まとめエッセー

キアスム装置はどこにでもあり、どこにでもない場所と時間で作動し続けている。偶然の出来事として自己を貫いたかと思うと、ある種の「宿命」のような必然性として、私をこの世界の底なき底に沈みこませる。私の現在の生に意味はあるのか、ないのか。現在と…

研究計画の書き方(1年生用)

(参考1) 研究計画の書き方(これを参考にレポートを書く癖をつけてもよい) 論文題名:「ロラン・バルト芸術論研究」 副題:そのミクロな感性の普遍性に注目して ○ 論文題名は種に研究対象のみを明示して、あまり色をつけない。 ○ 副題は、筆者の視点や方…

『眼と精神』まとめ及びレポート

コメントより ・「存在するけれど触れ得ない境界」(デリダ)。Cf. デリダ『盲者の記憶』) ・線というより「腺」や「筋」。内的にある、からまった無数の筋をすくい上げてキャンバスに貼っていく。(水槽の筋を救う→グロテスク芸術)→ cf. 加賀野井秀一『猟…

触発する/される身体  ――障害学、人類学、美学の観点から

触発する/される身体 ――障害学、人類学、美学の観点から講師:田中みわ子(障害学)、吉田ゆか子(人類学) 増田哲子(美学) 時間:3月26日(土) 15:00 – 17:30 場所:人文社会科学系棟A101学類生の方の参加も広く歓迎いたします。趣旨 _________________…

コメント ・現代絵画は画家の自問自答?→ 世界が世界自体に問いをなげかける(『見えるものと見えないもの』) ・フェルメール<真珠の首飾りの少女>。絵にふさわしくない椅子を移動 ・デカルト:空間の理念化。メルロ=ポンティ:空間を実験場とする。観察…

デカルトとメルロ=ポンティ

ここまでの段落では、 ・イメージの認識が身体の運動に結び付いていること ・見る者と見えるものの可逆性、交差点に、人間の身体はある(76) ・視覚ものに取り巻かれ、そのなかで生起する(73) ・「身体の謎」:物と身体は同じ生地、視覚は物の中で起こる…

オートポイエーシス2001 河本英夫

コメントより ・「AをBとして知覚せよ」。作品を作品として成立させる条件の提示。意味形成の「可能性」が鑑賞を可能にする。思考や批評の対象ではない。 ・「ある作品には意味理解の境界線上に立つ行為主体を境界線のむこうがわへと押し出してしまう動力が…

まとめ1

学生のコメントとコメントについてのコメントの合作コメントを受けて・これまでの授業で示したかったのは、身体の運動、身体と道具との関係が、たんなる身体の訓練ではなく、すでに持っている「思考回路」そのものをも変えることである。主体と客体や道具は…

オートポイエーシスとダンス

オートポイエーシス autopoiesis(河本英夫『岩波 哲学・思想事典』)・神経生理学者マトゥラーナ、ヴァレラにより着想。社会学者ルーマンが一般システム論に活用 1) システム理論:要素の集合を決定、それらの関係をマクロに記述 2) 自己組織システム:…

『『眼と精神』11月26日

コメントより ・「私たちは世界そのものを見る」「私たちは、(あくまで)私たちが見ているもの(しか)見ていない」= このあいだの「裂け目」 ・ナルシシズムによって自分が浮き彫りになる。それは浮き彫りでしかないか?→ 「内感」「受動的綜合」 ・メル…

「『眼と精神』12月8日

・外部の内部、内部の外部。絶対値の関係? ・絵の完成とは、外部の内部化と内部の外部化が幾度となく繰り返された末の収束点 ・イメージは現実を「見えるようにする」のか or 「現実を変形して見えるように仕向けているのか」 ・他者の仕草の「読み取り」=…